今月の農作業(9月)柑橘
JAありだ営農指導課
仕上げ摘果
仕上げ摘果は、この時点でしっかり果実を落とせるか落とせないかによって今年の果実の品質と来年の着果量が大きく左右されることから、1年間を通した農作業の中で最も重要な管理作業と言えます。摘果講習会等で適正な葉果比は20葉〜25葉に1果であると説明していますが、実際適正な葉果比になった樹を見たことがある人は少ないのではないでょうか?樹の状態によって異なりますが、標準的な着果量で高さ2m、横幅2.5mの樹の葉数と生理落果終了後の果実数を数えると、葉数は約10000枚、果実数は約1000個になります。この樹を適正な葉果比にすると果実を400個着果させることができ、残りの600個は摘果で落とす計算になります。(果実1個を100g、10アールに樹が100本植えているとすると収穫量は4トン)実際に適正な葉果比に合わせると樹の見ためとしてはとても少なく感じると思います。
生育が進み、それなりに果実が肥大すると、摘果により「肥大しすぎるのではないか?」や「これ以上摘果するのはもったいない」という思いがうまれ、収穫時点で十分に摘果できている園地は少ないのが現状です。大事なことは、【収穫時点で適正葉果比20葉〜25葉に1果】にすることです。粗摘果で摘果し過ぎるのではなく、仕上げ摘果以降で欲を断ち切って多くの果実を落とすことが重要です。そうすることで品質が向上するとともに来年の着果量も確保することができます。そのために、7月号にてお伝えしたように、仕上げ摘果が十分に行える着果状態にしておくことが重要です。
■方法
粗摘果でスソ・フトコロを中心に摘果していれば、表面の果実は肥大が進み、果実重が増加し枝が下垂、果皮のキメも滑らかになってきます。この状態になってから仕上げ摘果で果実を落としていきますが、優先して摘果する果実は小玉果です。理由としては、樹の状態や着果部位にもよりますが、表面の果実には肥大の良い果実と悪い果実があり、摘果で大きくしたものとは意味は異なりますが、肥大の良い果実は養分を多くもらう事ができるポテンシャルの高い、品質が上がりやすい果実です。肥大の悪い果実は養分が十分に供給されないポテンシャルの低い、品質が上がりにくい果実となります(図1)そのため、早い段階から摘果すると、ポテンシャルの高い果実が肥大しすぎてしまい、逆に品質が低くなってしまいます。表面の果実は、枝で下垂させるための重りであるとともに肥大の良いポテンシャルの高い果実を肥大させ過ぎない役割もあります。
次に果実の角度が重要です。枝が下垂しても上を向いている果実は果梗枝が太く、糖度が低くなる傾向です。また、葉が果実の上にない状態が続くと、日光に長時間さらされるなど自然環境の影響を受けやすく、果皮障害の発生リスクが高くなります。まとめると、仕上げ摘果では小玉果と上を向いた果実を落とし、肥大の良い下向きの果実を残すことがポイントです。(図2)そうすることで浮皮などの果皮障害の発生が少なく、糖度が上昇しやすい果実だけが残ります。今年は着果量が少なく、果実の肥大が良いので特に摘果のタイミングが重要になってきます。慌てて摘果すれば大玉、品質低下に陥る可能性が高くなります。また、近年は秋季に大量の雨が降る傾向にあります。実際に去年も9月に500ミリを超える降雨があり、果実品質に大きな影響を及ぼしました。秋季に降雨が多くなるかもしれないということも考慮し、仕上げ摘果に取り組んで下さい。時間が限られた中での管理作業になりますが頑張っていきましょう。
浮皮軽減対策
浮皮は、果肉と果皮の間に空間が生じて発生する生理障害です。近年は夏季の高温干ばつや秋季の温暖多雨の影響により生育が前進し、収穫期に過熟になるパターンが多くなってきています。前述のように摘果は果皮障害を軽減するのに有効な手段ですが、それに加え、ジベレリンの散布も果皮障害を軽減することができます。使用方法はジベレリン協和液剤1〜5ppm(5000〜1000倍)にジャスモメート液剤2000倍を加用して下さい。散布時期は9月10日〜20日を目安に散布して下さい。なお、ジベレリン散布によって着色遅延を伴う場合がありますので注意して下さい。
詳しくは最寄りの営農センター・AQ選果場指導員にお問い合わせ下さい。