今月の農作業(11月)柑橘・山椒
更新:2022年11月1日
柑橘
樹上選別
本年は、春先~8月末まで降雨が少なく、9月以降で降雨が増えてきました。生育後半での降雨が多くなったことにより、夏場の乾燥で高まっていた品質が、やや下がったように感じます。マルチの被覆や仕上げ摘果など対策を行っている園地もあると思いますが、さらに品質の良い果実を収穫するためにも樹上選別を行いましょう。
果実径が適正になっている場合、「ちょうどいい大きさになった」「これ以上摘果するのはもったいない」と思いがちですが、摘果の目的は果実肥大促進、果実径の適正化だけではありません。早生以降の園地は再度見回り、仕上げ摘果で見落とした品質の悪い果実などを摘果し、適正着果量になるように調整しましょう。
特に本年は表年傾向です。収穫時点で適正着果量に調整することが、連年結果維持につながります。
また、摘果のタイミングが早すぎると、日焼け果の発生を助長します。仕事の段取りを優先したり、着果量が少ないのに毎年同じ時期から摘果を始めたりするなど摘果時期が早すぎると、肥大が一気に進むとともに果梗枝が太くなり、果実は上を向いた状態になりやすくなります。摘果時期の早い極早生で日焼け果の発生が多いのはこのためで、摘果時期の遅い普通温州では少ない傾向です。早期摘果では隔年結果、品質低下、果皮障害の発生などさまざまな弊害が生じ、変化する気象の中で対応することが難しくなってきています。来年のことになりますが、摘果のタイミングを今一度考えるようにしてください。
浮皮軽減対策
近年、秋季の高温と降雨による浮皮の発生が問題となっています。
浮皮は、果肉の発育が停止するのに対し、果皮の生育が継続し、果皮と果肉が分離、隙間が生じることによって発生します。除草などにより園地を乾燥気味にするとともに、軸太果や上向きの大玉果などを樹上選果して、果梗枝が細く、下垂した果実を残すようにしましょう。また、収穫の遅れも浮皮発生の原因となるので、品質の仕上がった園地、樹より収穫遅れにならないよう、品種構成などの改善も長期的な対策として考えてください。
収穫作業
収穫については、園地や樹により着果のバラつきが大きい分、分割採果や適期採果による品質の均一化・高品質化が重要となるため、園地ごとに、着色・糖度・酸度を定期的にチェックし、品質基準に基づいて収穫時期を決定しましょう。
一樹内においても果実品質にバラつきがあるため、成熟が早い外成果を先に収穫するなど、分割採果も行い、果実品質の統一化に努めましょう。
果実腐敗対策
腐敗果の混入および出荷先での腐敗は市場・消費者の信頼を失うことにつながります。
防腐剤を散布していても生傷への薬剤効果はありません。なるべく果実を傷つけないよう丁寧に扱うことが重要です。そのため、採果の際は必ず2度切りを行い、ハサミキズやホゾ高を防ぎましょう。
また、果実が濡れている状態での収穫も腐敗の原因となります。雨採りはしないで、果実が乾燥した状態で行いましょう。また、防腐剤の散布を心掛けましょう。
防腐剤の散布(表1・2)
収穫前には必ず防腐剤を散布しましょう。
また、果実成熟期に集中した雨や台風によるスレ傷、泥はねなどで褐色腐敗病が発病します。降雨後に気温が高い場合は多発しますので、発生が見られた園地では早急に防除を行ってましょう。
ハナアザミウマ(表1)
着色の良い園地や毎年被害が出ている園地では特に注意するようにしてください。定期的に園地を観察し、発生の確認次第、防除を行ってください。また、仕上げ摘果や樹上選別により、果実同士の接触面を減らすことで予防しましょう。スピノエースフロアブルは収穫7日前、ディアナWDGは収穫前日までの使用が可能です。収穫前日数に応じて使用薬剤を選択してください。
秋肥の施用
秋肥は樹勢の回復と耐寒性の向上、花芽分化や新梢の伸長充実などに影響し、連年安定生産するために非常に重要です。
施肥時期は、早生温州で10月下旬~11月上中旬が適期です。施肥量は10a当たり窒素成分で12㎏を目安に行ってください。施用時期が遅くなると気温低下により地上部へ養分の分解・吸収が進まず、肥効が悪くなります。また、流亡して無駄になることがあるため、秋肥は適期に適量を確実に施用することが大切です。また、着果量の多少に関係なく施用することがポイントです。着果量が少ない樹だからといって施肥を施用しない人もいますが、これは大きな間違いです。着果量が少ない樹ほど養水分を引っ張るための果実がないため葉色が悪くなり樹勢がしている可能性があります。今後の樹勢低下を防ぐためにも着果量に関係なく秋肥を施用してください。
マルチ被覆園については、収穫後に必要に応じて灌水を行い、窒素成分主体の液肥を2~3回程度葉面散布するなど、樹勢の早期回復を図りましょう。液肥は、尿素500倍などを散布しましょう。尿素500倍に対して、葉面マグ500~1,000倍やハイフラクトース(液糖)1,000倍を混用することで窒素の吸収効率を上げることができます。
山椒
ぶどう山椒の苗木定植
植える前の準備
最近では定植を行っても、鹿により葉や枝や樹皮を食害され、樹の生育が悪くなったり、最悪の場合枯死しているものもあります。そのため、苗木を定植する前には必ずワイヤーメッシュとネットなどで園地を囲って対策を行ってください。囲う高さは2m以上で囲っておくことで鹿の侵入はほとんど防ぐことができます。(急斜面がある場合を除く)ネットだけで囲ってしまうと草刈り時に刃や紐などがネットに絡まってしまい作業効率が悪くなるため、できる限り下の部分はワイヤーメッシュで施工してください。
ネットは網目の粗いものについては風の影響を受けづらいというメリットがありますが、鹿の角が絡まったり、網目に顔を入れて噛み千切ったりする可能性があります。
逆に網目の細かいものについては風の影響を受け倒れやすくなってしまいますが、鹿が絡まったり噛み千切られたりすることは少なくなります。施工する園地の状況に応じて使い分けてください。
定植
定植の間隔は樹と樹の間を最低4mあけてください。(樹が大きくなった時に作業効率が良いため)
平地の場合には苗木を植える周りを高畝で準備し、多湿にならないように注意してください。定植の仕方は園地の形によって平行植えにするか千鳥植えにするか、有効的に面積をつかえる方で選択してください。
苗の準備
基本的に山椒苗は接ぎ木されています。接ぎ木部分が地面に埋まらないように注意して定植してください。
また定植時に今後の樹形を想定し、芽の位置を確認しながら第1回目の剪定を行います。(剪定位置は地際部分から30~40㎝くらいの高さ)
定植時の注意点
可能であれば、大きくなったときに枝同士が当たらないように芽の向きを考えて定植してください。
ウッドエースを施用する場合は植穴に3~5個入れ、直接根にあたらないように軽く土を被せて定植してください。
定植後はJA配合「星」を株元に300g程度、石灰を300g程度、堆肥を10㎏程度施用してください。
また、苗木を風から守るために支柱を立てて縛り固定しておきましょう。